花のラブレター
2010年 05月 13日
夫は無口な方だ。
余計な事はしゃべらないし、家族と笑いながら話すことも滅多に無い。
と言うか、私に向けられた笑顔など見た事も無い。
「どうしてこんな人と結婚しちゃったんだろう。」と後悔したことは数えきれない。
確か、結婚前、私にアプローチをかけてた頃は、夫は笑顔満面だったと記憶してる。
常に笑顔で楽しそうに話していた。
25年も前の話だ。
あれは、釣る為のえさだったのだろう。
結婚してからの夫は、いつもつまらなそうな顔をしてる。
楽しそうな顔は両手で数えられる程だろう。
子供達も大きくなり、
上2人の息子は出て行った。
末っ子の高校生の娘が残っているが、
食事時以外は自分の部屋にいることが多いし、
学校が休みの日曜日は、
友達と出かける事が多いから、
夫婦2人の時間は随分と増えた。
滅多に2人になる事がなかった頃は、
2人であちこちでかけてみたり、
おしゃべりしたり、
まぁ、恋人時代みたいに過ごせることを夢みたりしてみたが、
現実、2人の時間が多くなった中年夫婦には、
とりたてて2人ですることが見つからない。
かつては口にした「愛してる」も「大好き」も、
口にすることも、耳にすることもない。
ただ・・・
直腸がんの手術後、
直腸がなくなったから大腸に便を溜めておけない夫のトイレの回数は多く、
特に夜中は可哀想に眠れない程トイレにかけこむことが多い。
少しでも癒されるようにと生花を飾る。
造花の方が経済的だけれど、
生きた花の、切られても「生きている」その力に期待する。
激しさはないけれど、
こういう形のラブレターも、中年夫婦にはいいだろう。